囂庵コラム アーカイブ

ふしぎな因縁

去年の暮れごろ買いたかった古書があった。
なにをかくそううわさの「園公秘話」で、西園寺公望の側近に奉仕した小林菊子(新橋蓬来屋時代玉八)が、手元で懐かしそうにパラパラと頁を括る『東京粋書』である。

目的は、もちろんこの本で見ることができる写真である。なにせ写真に写るご本人小林刀自ですら「・・よくこんな寫眞が残って居りました。・・」と感心している代物である。

ところが、この明治十四年生まれは、神田は神保町泰川堂で63,000円もする。
これではとてもとても手がでないので、東京に二冊あったうちの一冊を中央図書館からリクエストした。同時に埼玉県では小川町の図書館に一冊あったので、これをMoro青年に見てきて頂けないかとメールをした。

この『東京粋書』の存在は国立国会図書館のデジタルライブラリーで知ったものだが、なにせ余の住むところから東京は遠い。

そんなかんなで、一週間。ついに連絡がきた。余は急ぎ近所の道立図書館に馳せ参じた。ところが、なんと肝心要の写真が見あたらない。どうもこの本には写真付きと、付かないものがあったようで、実に我が身の不運さと、リサーチ不足の愚かさを嘆いた。

そんな嘆きの中で朗報が届いた。Moro青年が小川町の図書館の『東京粋書』の「寫眞」をケイタイで撮影して送って下さったのだ。

こうしてようやく余は、玉八、愛子、おまさ等、明治十四年ころの噂の美女たちのご尊顔を拝し奉ったわけである。

その後すぐに余は小川町から取りよせて、本物の「寫眞」を手に再び感動に噎んだことなどは言うに及ばないだろうが言う。

そして、後日談。この泰川堂の「東京粋書」、暮れに、63,000円だったものかどうかはわからないが、今31,500円で出ている。しかも写真入りとある。一方、同じくあきつ書店の44,100円は値上がりして45,360円に。これには写真付きとは書いてない。

さらに、そのご 2016/04
おっ、やすくなった。あれ、別のお店から・・