囂庵コラム アーカイブ

風流黒柿

余の親父殿が愛用していた硯箱と硯だ。

いまでは余が使わせて戴いておるが、情けないことに、この硯の蓋がそれなりに風流なものであることを知らなかった。

それどころか、おっちょこちょいなわが親父殿が、墨汁を誤ってかけて汚してしまった、ただの染みとばかり思っていた。

ひょんな事でそれが、「黒柿」という結構なものであることを知り驚いた。

それまではこの蓋に漆をかけて、いつかキレイにしてやろうかなどと極めて野蛮なことを考えていた。

あぶない、あぶない。

因みに、硯箱の方は堆漆という漆を厚く塗り重ねて文様を彫り込んだ技法の「堆朱」であることは識っていた。

参考:樹齢数百年を越える柿の古木のうち、ごく稀に黒色の紋様があらわれることが あります。 この紋様があらわれた柿を「黒柿」と呼びます。 おかや木芸さまHPより