囂庵コラム アーカイブ

ことば考

文字とか言葉というものは面白いモノで、時代時代でその意味するところのセンターポジションが変わるらしい。

たとえば、「坊」という言葉であるが、いまではそのセンターポジションの意味を「お坊さんお家とかお坊さんの称」と捉えてしまう。

しかし、辞書を見てみると、

辞書広辞苑電子版6では、
ぼう【坊】 バウ(慣用音はボッ)
(1) (ア)区画されたまち。市街。
(イ)都城制の1区画。4町四方の称。
(2) 春宮坊(とうぐうぼう)の略。
源氏物語(桐壺)「―にもようせずはこの御子の居給ふべきなめり」
(3) 僧侶の住居。転じて、僧侶。
源氏物語(若紫)「かみの聖の―に、源氏の中将わらは病まじなひにものし給ひけるを」
(4) 男の幼児を親しんで呼ぶ称。男の幼児の自称。古くは女児にもいう。
「―や」「坊(ぼっ)ちゃん」「お花―」
(5) ある語に添えて、親しみまたは嘲りの気持を含めて、「…な人」「…する人」の意を表す語。「風来―」
とある。

新漢語林 第二版では、

部首:土
部首内画数:4画
総画数:7画
《常用音》ボウ・ボッ
《音訓》ホウ(ハウ)・ボウ(バウ)陽 fāng,fáng
《音訓》ボッ

まち。
村や町の一区画。市街。
いちば。市場。
みせ(店)。また、工作場所。
へや(室)。=房。また、いえ(家)。
建物。
皇太子の宮殿。「春坊」
役所の名。「典書坊」
僧の住居。てら。「宿坊」
つつみ(堤)。
ふせぐ(防)。
ボウ(バウ)。
僧。また、僧のように頭をそった人。
幼児を親しんで呼ぶ語。
他人を親しむ意、または、あざける意を表す語。「けちん坊」
昔、都の行政区画。十六町をいう。

こうして見ると、国語の世界のセンターポジションは「まち」とか「みせ」とかで、坊さんの坊は端っこなのがわかる。

つまり、余が言いたいポイントは、両国元坊とは両国元町とおなじことであるのだということさ。

そう言えば、坊さんの「坊」は俗っぽい僧侶のへなちょこぶりを揶揄した言葉としてはじまったとどこかにあった。