おもろ31

天国の井上俊三に代わりて 三角形の光 (1)


長崎における、カメラが南に向いた写場(スタジオが北を向いている)の、夏至の日の太陽の当たり具合。


嘉永期の建物レイアウトに、説明治初年の写真をもとに建物を配置
渡辺出版の「英傑たちの肖像写真 坂本龍馬の写真」で、渋谷雅之さんが述べておられる。

そこで、この三角形の光(左図中のA) のことである。この光は左方向から入っている。左方向ということは、東の方向から光が来ていることになり、時刻は午前 中ということになる。このことは井上俊三の子孫の証言と矛盾しない。この光は、写場の隙間から入ったものか、明かり取りの布が一時的に外れたものか、だいたいそのあたりが推測できる。一方、斜め方向から光が入るという悪条件のために、通常開業されていなかった早朝の時刻を井上俊三が選んだというような可能性も考えられるが、あくまで推測である。いずれにせよ、確かなことは天国の井上俊三に聞くしかない。前述のように、トリミングを考えて構わずに撮ったのか、やむを得ず撮ったのかについても同様である。

渋谷さんは、明治期の写真撮影スタジオの構造は、一般に北に開口部を持ち、ホリゾントは南側に配置されたことから、そのまま上野彦馬のスタジオ配置にもこのルールを当てはめられたので、前出の発言となる。

しかしながら、カメラが南を向くスタジオでは、基本的に日中は逆光となり、背面の南面ホリゾントに、太陽光による「三角の光り」(A) が出来る可能性はかなり限定される。

太陽が南面のホリゾントに当たるのは、夏至を挟んで秋分の日から秋分の日まで(おおまかに夏季の間)は可能だが、上野彦馬の写場の奥は、天地及びサイドが遮光される構造になっており、ホリゾント中央に△の光を得る条件はかなり厳しい。

まずは一番条件の良い夏至の日の太陽は、ホリゾントにどのように当たるかを、余の作成したシミュレーション映像でご覧頂きたい。

一番条件の良い夏至の日の状態がおわかり頂けたところで、次回は、条件がさらに悪くなる筈の他の日を見ていこうと思う。

天国の井上俊三に代わりて  今日は、ここまで。

三角形の光(2)へ ←