おもろ43

納得の古写真鑑定法

以前、弊HP「旦那、ここは瀧見茶屋ではありませんぜ。」でも取り上げた、明治初期の皇居吹上御苑の姿である。
HPにアップロードしてからもう10年以上にもなる。

次は、有名な「吹上御苑瀧見茶屋前にて明治天皇にひれ伏す写真師内田九一」と説明がある写真である。

だれがこのキャプションを使いはじめたかはわからない。しかし、キャプションや解説の引用や孫引きがもっぱらの古写研究真の世界では、この間違いキャプションが、あいもかわらず堂々とまかり通っている。

えー間違いなの?と驚かれるのもムリはない。一般に写真などのキャプションはだれも変だとは思わないのが普通だ。はやい話だれも真実は知らない。ただただ各自が合理的な要素を確認して合理的に「推測」しているにすぎないからだ。つまり、キャプションや解説著者の「合理」に対するセンスの度合いが問題なのだ。

今回は、そんなややこしいこともなく、だれでも納得の鑑定法の一つ二つをご伝授する。

1. 超簡単。キーライト、即ち、太陽の位置が何処にあるのかを、見つけること。
2. 超簡単。他の資料と比較し、相違点を見つけること。つまり「証拠」。
3. 超簡単。決して想像や予測で批判や判断をしないこと。実はこれが最悪の鑑定を避ける最良の鑑定法であることをしるべし。

さて内田九一の畏まる場所の誤りを合理的に見つけていこう。

拡大

黄色の円で指摘した柱と柱の影の向きは、吹上御苑瀧見茶屋前とすれば、北北西からキー光線が射していることになり、変ですねと普通は判断する。

このキー光線の高度で、北北西に太陽があることはあり得ない。

さらに、緑色の円で指摘した庭に降りる踏み石の位置の違いで、やはり変ですねと。

ほかにも幾つか有るのだが、この2点で内田九一が畏まっているところは「瀧見茶屋ではない」と十分判断出来るのである。

では、正解はどこだ?との質問には、下らない予測やしたり顔をせずに、判らないと答えたうえで、地図という「合理的」な証拠を用いて、梅茶屋ではないかと思う?と感想を述べるに留めるくらいでよろしいのではと思う。

世の学者・研究者の皆さまには、間違いを合理的に正すのは簡単だが、正解を合理的に示すことのむずかしさを、改めて確認して戴きたいものだ。