囂kamabisuan庵

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12月24日

めでたき人の数にも入らむ老の暮れ 芭蕉
(めでたきひとの かずにもいらん おいのくれ)


12月25日

なりにけりなりにけりまで年の暮 芭蕉
(なりにけり なりにけりまで としのくれ)

今年も残り2%をきる「なりに」まではきた。


12月26日

写真のない時代の人物の姿形は想像するより他はない。
たとえ肖像画などが残っていても、その人物の一時の姿でしかない。
そこで余は、おのが頭で歴史上の人物の気になる時代の姿を想像で描いてみることとした。
今回は忠右衛門宗房時代の「芭蕉」の顔だ。
弟子の許六が元禄六年に描き残した画から、若者の時代の芭蕉の姿をトレースしてみた。
目元はキリリ、眉もキリリ、小さめの唇、大きめのスジが通る鼻、面長、大きめの耳たぶ、総合的に顔立ちは「ジャニーズ系」とでも。身長はそれほど高くはなく、おそらくそれほど目立たない存在の青年であったろう。
ヤットーの方も自ずとヤワ、とても得意とは思えない。
文才があるかとといえば、この時期の句を見て、僭越ながら、余の評価ではレベルは「人並み」。
そんな凡庸な宗房を、だれがあの俳聖芭蕉まで導いたのか、余にはとても興味のある問題だ。
では、寛文十一年、28歳宗房時代の句。

春立つとわらはも知るや飾り縄 芭蕉
(はるたつと わらわもしるや かざりなわ)


12月27日

酒のめばいとど寝られぬ夜の雪 芭蕉
(さけのめば いとどねられぬ よるのゆき)

ひとり静かな深川の雪の夜、四十三歳の芭蕉の句。 一方、喜多川歌麿の肉筆画。「深川の雪」の華やかさ。
雪は今宵も深深と人の心の奥に降る。


12月28日

躑躅生けてその陰に干鱈割く女 芭蕉
(つつじいけて そのかげにひだら さくおんな)

つつじの花が生けてある近江のめし屋での句だそうだ。

この句は春であるが、女が割いている干鱈は今ごろの北風に晒されて旨みをぐんぐん増していく。

北日本日本海の海人はこの生活には苛酷な北風をあえて「玉風」というという。

開高健流に「あわれな話だな。日本人って不思議だなあ。」

それにつけても、「躑躅」も「薔薇」に劣らぬ読むも書くも難しい字だ。

今年も98.90%おわりました。あと1.1%だいじにすごそう。


12月29日

市人よ此笠うらふ雪の傘 芭蕉
(いちびとよ このかさうろう ゆきのかさ)

今年の北海道は雪の季節が記録的な早さで訪れた。

十二月はほぼ毎日の降雪だった。

街も郊外も売れるなら大安売りで売れるほど路肩に大きな雪山が出来ている。

芭蕉俳句の風流味が、此の地で読むと、「川柳」もどきの戯れ言のように感じてしまう。

12月31日

鷹の目も今や暮れぬと鳴く鶉 芭蕉
(たかのめも いまやくれぬと なくうずら)

忘れ草菜飯に摘まん年の暮 芭蕉
(わすれぐさ なめしにつまん としのくれ)

みなさまよいお年を


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