囂kamabisuan庵

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7月15日

天和三年夏ころ、甲州にて、伊予の俳人井海(せいかい)から贈られた歌仙を賞し、「歌仙の讃」なる一文を送る。と。

崑崙は遠く聞き、蓬莱・方丈は仙の地なり。

まのあたりに士峰地を抜きて蒼天を支へ、日月のために雲門を開くかと。向かふところ皆表にして、美景千変す。詩人も句を尽くさず、才子・文人も言を絶ち、画工も筆捨てて走る。若し藐姑射(はこや)の山の神人有りて、其の詩を能くせんや、其の絵をよくせん歟。

雲霧の暫時百景を尽しけり 芭蕉
(くもきりの ざんじひゃっけいを つくしけり)

雲霧が刹那刹那お山の表情を変えていく。どんな名人でも、とてもこの富士山の美しさ表せまい。まてまて、神サマ仙人ならできるべかな?無理だべえな。富士山の美しさは筆舌しがたいっうことだ。

さらに、雲霧スクリーンに隠された白一色の「白景」の世界を、「一瞬」で、様々な表情を見せる「百景」の世界に変えてみせた。この「霧←→白←→ 一 ←→百←→景」は、駆け出し俳諧師桃青芭蕉として自慢の言葉遊びpointだったと思う。

さて、さて、

雲霧の寝ぼうの朝の摩周かな 半可ξ
(くもきりの ねぼうのあさの ましゅうかな)

余は、先日、ちょっくらハードな3日で882kmっうドライブ旅を遠来の老人と二人でした。

摩周湖は45年振りだ。宿の朝めし前6時半、霧の摩周湖はすっぴんだった。


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7月16日

水無月は腹病やみの暑さかな 芭蕉
(みなづきは ふくびょうやみの あつさかな)

元禄四年六月。

本日7月16日は旧暦水無月六月四日。

各地で温度計は35度越を競っている。

災害にあって後片付けと復旧に労しておられる方々にはお気の毒だ。

せめて行政は、夜間にぐすり休める環境を、下らん一部の人間の射幸心増長環境整備に優先し、早急に整えて欲しいものだ。

かけ声だけの親玉と、対策の地方への丸投げでは、全国民の心は辛い。

国として、自ら知恵を出せ国土交通省。自ら動け国土交通省。

さてさて、
先日の無茶旅先で、この暑さでも毛皮着て多少バテぎみ風の人々にもあった。

顔をまっ赤に目をトロンとさせていた。

水無月は猿も呆るる暑さかな 半可ξ
(みなづきは さるもあきるる あつさかな)

あれっ! 猿だった。


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7月16日

古池や蛙飛びこむ水の音 芭蕉
(ふるいけや かわずとびこむ みずのおと)

貞亨三年春、江戸蕉門の門弟多数を芭蕉庵に集めて、蛙を主題とする会を催した。

一方、平成三十年夏、
半可ξは、十数年ぶりに旭川の旭山動物園を堪能した。

旭山と言えば、北極熊のダイビングや、空を飛ぶペンギンなどの行動展示が有名だ。

北極熊のもぐもぐタイムダイビングを目の前で見たが、あまりの迫力と楽しさで、ドボンの方のシャッターを押すことなど考えもつかなかった。

で、

炎昼や企鵝飛びまわる水の空 半可ξ
(えんちゅうや きがとびまわる みずのそら)

企鵝 きが ペンギンの和名とか


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7月17日

山城へ井出の駕籠借る時雨哉 芭蕉
(やましろへ いでのかごかる しぐれかな)

元禄二年十二月。井出(京都綴喜郡井手町)。京都から奈良へ向かう街道筋。ここは「蛙」の名所と言われている。と。

奈良の春日若宮御祭の見物旅を終えて、十二月の某日京都に向かって井出にさしかかると、俄に時雨れて、ヘイ!タクシーっうとこですか。

旅に籠も今の世ではレンタカー。

旭川の旭山動物園の駐車場で見かけた光景。

たまたまこれ全部見事にレンタカーだったんでビックリ。

つまり、お江戸の昔ならば駕籠かきあんちゃん達が褌一丁でたむろしている図なんだすな。

空港でレンタカー借る夏旅行 半可ξ
(くうこうで レンタカーかる なつりょこう)


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7月17日

大津にて

世の夏や湖水に浮む浪の上 芭蕉
(よのなつや こすいにうかむ なみのうえ)

元禄元年夏、『笈の小文』の旅の帰路、大津の井狩昨卜(さくぼく)亭に招かれての挨拶吟。と。

この句は二度目の登場。

世は真夏の暑さにうだっているというのに、このお屋敷は湖上の波に浮かんでいるかのように涼しいですね。とか。

さてさて、湖上に浮かぶっうことで、

先日の882km大雪山麓一周の旅で、最もメインに上げたのが、243号美幌国道を植生の変化を楽しみながら進み、標高525mの美幌峠を越えた途端、眼下に開く壮大無比なる屈斜路湖の大パノラマ光景を目にすることだった。

スケールがでかすぎて写真では収まらない感動だからと案内した。

やっぱり写真なんかには収まらない。

心の印画紙にはバッチリ収めてもらえたはずだ。

宗匠には無断で、大宗匠の句をこの光景に捧げたい。

美幌峠にて

世の夏や湖水に浮む浪の上 芭蕉
(よのなつや こすいにうかむ なみのうえ)


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7月18日

淋しさや釘に掛けたるきりぎりす 芭蕉 (さびしさや くぎにかけたる きりぎりす)

はじめ句空宛真蹟書簡には

 静かさや絵掛かる壁のきりぎりす 芭蕉
(しずかさや えかかるかべの きりぎりす)

これは句空が兼好像の賛にとリクエストしたことに応じたもの。

壁・絵・きりぎりすの三題噺。なんか空間までもがごちゃごちゃとしとる。

元禄四年九月、膳所の義仲庵にて。と。

余は、その改訂版?冒頭の俳諧草庵集の「淋しさや・・」が好きだ。

ピントが釘ときりぎりすにピタッと合っており、周りの情景とのボケ味がじんわりと淋しさの心を増幅してくれている。

まさにこれならスッキリ一幅の写真絵画句だわさ。

さてさて、

先般の大雪山麓一周882km旅のもう一つのpointは、とりだててなんということは無いが、寄らずに居られぬオンネトーだ。

余が50年近く前にはじめて立ち寄って以来の大ファンだわさ。

天候がよいと雌阿寒岳雄阿寒岳が並んで見えるが、余は曇っていてむしろそれが見えない方が絶対好きだ。

ペンキ画家さんには申し訳ないが、銭湯の壁絵みたいなあれもこれもはちょっとね。

小さな池で、ただ深い青緑の水を湛えているだけ。これで十分だす。

細かな季節の変化が、この小さな池の表現力をその都度飾り盛り上げ、冬は知らぬが春夏秋いつも美しい。

今回は、東山魁夷バージョンでのおもてなしだった。

朝曇りオンネトー冴ゆ水鏡 半可ξ
(あさぐもり おんねとーさゆ みずかがみ)


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7月19日

角が蓼蛍の句に和す

朝顔に我は飯食う男哉 芭蕉
(あさがおに われはめしくう おとこかな)

天和二年、芭蕉39歳の作。と。

詞書きにある「和する」とは、他人の詩に韻や題材などをあわせて詩を作ることだわさ。

つまり、放蕩家遊び人其角の自己紹介の句「草の戸に我は蓼食ふ蛍哉」にたいして、

おらは夜遊びなんてしねえし、もてねえし、金もめえし、到底おまんに、敵わぬわ敵わぬわと、おおいにうらやみ僻んでみせてる句だわさ。

決して諭したり、反省を促したりの句ではないさね。

冷やかし、素見し、ひやかし。

さてさて、

ぱんちょうに我は華喰う男かな 半可ξ
(ぱんちょうに われははなくう おとこかな)

余には素見しなどとてもできない、どーしても寄らずには帰れない「味」が・・帯広にある。

っうことで、大雪山麓一周旅の三日目のお昼は当然帯広のぱんちょう。

ぱんちょうの豚丼menuは、のっかるお肉の枚数でお値段が違う。

なぜか松→竹→梅の順で梅の上がお肉八枚1600円の華。

お味噌汁はオプション。

45分並んで、食べて、出たら、まだいっぱい並んでいた。


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7月20日

風流亭

水の奥氷室尋ぬる柳哉 芭蕉
(みずのおく ひむろたずぬる やなぎかな)

元禄二年六月一日。『奥の細道』旅中、大石田から羽黒山に行く途中で「風流」こと新庄の富商澁谷甚兵衛宅にて。と。

空はカンカン照りで今日言うところの「危険の暑さ」。

風流亭の露地を流れる小川の水に足でも浸せて、イイネー ちびたい! ここの清水は山奥の氷室からダイレクトに流れて来てるみたいだわさ。

イイネー。ここで一句。 となりました。たぶん!

さてさて、
過日の大雪山麓882km一周の三日めの十勝名物ぱんちょうの豚丼華のあとは、とうぜん帯広六花亭でコーヒーデザート。

六花亭といえばマルセイバターサンドが有名だ。

そのサマーバージョンがここ帯広本店と札幌本店のみで食せるんだわさ。

マルセイアイスサンド。

蝦夷の奥冷菓尋ぬる爺両人 半可ξ
(えぞのおく れいかたずぬる じじふたり)

老爺二人で甘い物・・気持ちの悪い画ですな。

でも冷菓マルセイアイス サンドは旨い。

わるいけど、マルセイバターサンドより旨い。

さてさて、本日は旧暦六月八日。土用の丑の日。

もちろん鰻食べます。


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7月21日

近江屋玉志亭にして、納涼の佳興に瓜をもてなして、発句を乞うて曰く、「句なき者は喰う事あたはじ」と戯れければ

初真桑四つにや断たん輪に切らん 芭蕉
(はつまくわ よつにやきらん わにきらん)

元禄二年六月二十三日。『奥の細道』旅中、酒田の富商近江屋三郎兵衛宅で。と。

気持ちは分かる。

ウン十年前、余が初めて北海道に渡ってきたときの夏、先輩の家でもてなされ、デザートに夕張メロンの半分がでた。

先輩がその折り、子供の頃からメロンをフォールで食べるのが夢だったと仰った。

当時夕張メロンは旨いのにとても安かった。

千疋屋や明治屋や高野から桐箱に入ってやってくる青肉種のメロンが高級で、八百屋で買う赤肉種のメロンはかぼちゃメロンなんて言われ、金持ち層に軽蔑されていた。

しかし、残念なことに近頃その価格は高騰しつつある。

嬉しいような悲しいような心地だわさ。

切って切って夕張メロン1000円 半可ξ
(きって きって ゆうばりめろん せんえん)

過日の882km旅の終わりは地味にこの一切れ。


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