囂kamabisuan庵

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1月3日

生きている証拠なりけり年賀状 半可ξ
(いきている しょうこなりけり ねんがじょう)


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1月6日

冬月

月の鏡小春に見るや目正月 芭蕉
(つきのかがみ こはるにみるや めしょうがつ)

寛文七年、24歳の若い時の作。と。

小春は本来陰暦の十月の異名だから、冬っうより秋なんだけどさ? と思ったが・・

小春に「日和」をつければ、立冬後の穏やかな日のことだが、俳句の世界では、「小春」には「小春日和」の意味を持たせているんだと。

曖昧だけど、まあいいか。

さて、句の方は、小春日和のこんな時に鏡のような澄んだ月を見るのは目にとって「寝正月ならぬ目正月」だわさ、というのである。

  つまり、月→鏡→見る→目→め→ね→寝正月 の連想展開。
言葉遊びの貞門風俳句也。

ところで、「月の鏡」といえば、大阪の写真材料商桑田商会の創設者桑田正三郎が大正五年に発表した、幕末から明治に活躍した写真師たちの列伝が、その道の筋では有名だわさ。

そんで、古写真好きの余は、

月の鏡先ずは蓮杖つぎ彦馬 半可ξ
(つきのかがみ まずはれんじょう つぎひこま)

またまた「伊藤晴雨」の浅草仲見世「草双紙屋児玉」の写生が素敵だ。


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明治二十七年ということで、石版画が錦絵に並行して流行り出し、役者似顔絵は俳優写真に変わって来たということが誌されているだ。

明治はいよいよ写真の時代だ。
そんで、そんで、草双紙屋さんの扱い物も変わって行く。

そうそう、お店の天井から二個ぶら下がっているのは、陳列商品のための照明装置だわさ。もちろん電気じゃねえですが。


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「俳優の写真に変化してあり」と。

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1月8日

老慵(ろうしょう)

牡蠣よりは海苔をば老の売りもせで
(かきよりは のりをばおいの うりもせで)

貞亨四年春。と。

去来抄に去来さんの解説があると。

去来曰く、古事古歌を取るには、本歌を一段すり上げて作すべし。

喩へば、「蛤よりは石花(かき)を売れかし」といふ西行の歌を取りて、「かきよりは海苔をば老の売りはせで」と先師(芭蕉)の作あり。

本歌は、同じ生物を売るともかきを売れ、石花は看経(かんきん)の二字に叶ふといふを、先師は生物を売らんより海苔を売れ、海苔は法 (のり)にかなふと、一段すりあげて作り給ふなり。

「老」の字力あり。

(本歌=西行の歌)
 おなじくはかきをぞ刺して乾しもすべき
 蛤よりは名もたよりあり

アタマのことばがき老慵(ろうしょう)は、

 老慵 白居易
 豈是交親向我疏
 老慵自愛閉門居
 近来漸喜知聞断
 免悩嵆康索報書

 豈に是れ交親我に向かうて疎かならんや
 老(ろう)慵(ものう)して自ら門を閉じて居ることを愛すればなり
 このごろ漸(ぜん)に喜ぶ知聞の断つることを
 嵆康(けいこう)が報書を索(もとむ)るに悩(う)きことを免(まぬが)れたり

これですかね?

平成三十年の書初とせし

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俳諧っうもんは、いろいろ教養ひけらかしが大変だワサ。
まったくめんどくせえ。

句の表意味は、年取ったら重たい牡蠣より軽い海苔売りゃいいのに・・ったく!つうことらしい。

でももし、芭蕉くんの本当の意味が、老後は嵆康みたいに自由に我が儘にっうことだったら素敵だ。

肉よりは魚ば老の喰ひもせで 半可ξ
(にくよりは さかなばおいの くいもせで)

年取ったらコレステロールよりサカナ喰ゃいいのに・・ったく!と自戒するが、白居易の老慵の精神で今年も自由に好きにやらせていただく。


ウィキペディア

1月9日

不精さや掻き起されし春の雨 芭蕉
(ぶしょうさや かきおこされし はるのあめ)

不精さや抱き起さるゝ春の雨 芭蕉
(ぶしょうさや だきおこさるる はるのあめ)

元禄四年二月頃の作。48歳。と。
伊賀上野兄の家での作。と。

初案が「抱き起さるゝ」だと。

掻き起こすと抱き起こす。ずいぶんと扱いが違いまんな。

ぐうたらを叱られるのと、体調が悪いのを助けてもらうのとの違いだわさ。

実はこのとき芭蕉の体調はそんなによろしくなく、「・・拙者持病も折々きざし候へ共大痛も仕らず・・」などと怒誰宛ての書簡にしたためている。

初案は珍碩宛ての手紙にあり愚句と頭にひとこと添えてある。

本当は、情けネエですと心情を吐露しているわけださ。

後に「猿蓑」収録の時に「掻き起こされし」と改めたんでんな。

不思議なもので「掻き起こされる」状況には、春雨が生命力を与えてくれる喜びとお目覚めtimeの高揚感がある。

おらおらぐうたらしてねえで起きた!起きた!と。

さて、本日は温帯低気圧の影響で朝はめずらしく春の雨。

しかし、此の地、ぐうたらを叱られそうな時期までは、まだまだ数ヶ月。

無精さやそのままいくべ春の雨 半可ξ
(ぶしょうさや そのままいくべ はるのあめ)


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1月10日

年々や桜を肥やす花の塵 芭蕉
(としどしや さくらをこやす はなのちり)

元禄四年三月二十三日。

在伊賀。万乎別墅(べつしょ)桜見の会で俳諧一折興業。と。

つまり、別邸で開かれた花見の折りの半歌仙の発句。と。

肥やすだの塵だの、なんか情緒っうもんが・・ねえ?

ところで、西友でWranglerが安かったんで買った。

余が二十代初めの頃は27インチだったのが今や33インチ・・

年々や樹幹を肥やす桜餅 半可ξ
(としどしや じゅかんをこやす さくらもち)

余は甘辛どっちも大好きで・・


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1月12日

雪の河豚左勝水無月の鯉 芭蕉
(ゆきのふぐ ひだりかち みなづきのこい)

元和二年の作と。

当時、AさんBさんの二句を並べ、出来を宗匠が判定する、いわば競技俳諧が盛んにあったんだわさ。

芭蕉さんそれを捩って一句っうとこだす。

それにつけても、四十男の芭蕉さん・・妙な句だすな。

そろそろ春場所。

どひどい春の嵐が吹きまくる予感がしますな。

日本相撲協会のスキャンダルにしらける余としては、とてもとても健全な、日本とんとん紙相撲協会公認で、勧進大とんとん紙相撲を開催せむととんとんをとんとんす。

あっ、そうそう、余ならば文句なく、

雪の河豚右勝水無月の鯉 半可ξ
(ゆきのふく みぎかち みなづきのこい)


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1月14日

水学も乗り物貸さん天の川 芭蕉
(すいがくも のりものかさん あまのがわ)

延宝六年、芭蕉35歳七夕の時の作。と。

七夕だっちゅうに、雨降りでこれじゃ彦さんもさぞや難儀しておるだろう。あの高名な水学さんだって、天の川じゃあ、どうすることも出来んじゃろな。

さて、上五の水学とは、水学宗甫と仰り、長崎で難破したポルトガル船から、カラクリ仕掛で銀六百貫余を引揚げたり「長崎志」、佐渡金山では、鉱山を掘る際に湧きでる水の排水のため、水上輪を伝授したり「佐渡年代記」、淀川にカラクリ早船を仕掛けたりと「西鶴自註独吟百韻」、大の知恵者エンジニアだとか。

そもそも、延宝六年は、

森川許六の「本朝文選作者列伝」に、「武の小石川の水道を修め、四年になる。速やかに功を捨てて深川芭蕉庵に入て出家す。年三十七。」とあることから、

芭蕉さんはまさに、現役の小石川の水道工事の、嘱託お役人であった時の句であるっうわけだ。

もしかして、先進的な?芭蕉さん、
水学流水上輪技術で、神田川の排送水をしていたのかも知れない。

水学の技の知恵借る神田川 半可ξ
(すいがくの わざのちえかる かんだがわ)

水学ついでに付録 

明治大正大道芸からの問題 (伊藤晴雨の「いろは引・江戸と東京風俗野史」から)

明治年間より現代に到る迄つづく
教育理学「不断の水」の種

わかりまっか?


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1月15日

さし籠る葎の友か冬菜売り 芭蕉
(さしこもる むぐらのともか ふゆなうり)

元禄元年師走。と。

鎖し籠るは、自動詞ラ行四段活用。
門や戸をしめて中に閉じこもる。
引きこもる。

使い方は、「天照大神が鎖し籠る天の岩屋戸を開きて・・」

葎(むぐら)は、蔦草だが、ここでは葎の宿の意で、隠遁している者のすみかだと。

暮れだっつうに訪れて来るのは、冬菜売りの売り声だけだわさ。

おらが庵は葎だらけの家だけに、菜っ葉までも友達だと思うんだべな・・・

フン!類は類を呼ぶかあ!

余が言う芭蕉センセ一流の自虐性ヒガミ節だわさ。

これにあわてて弟子達が 忖度忖度。

まあ、何時ものことでやんす。

さて、本日は気温が高く、ボタボタと雪が降る。

まあ、近ごろには・・何時ものことでやんす。
温暖化が足早に進行してござるかや?

鴉も飛ぶのがめんどくさそう。
じーっと雪をかぶり続けて動かない。

さし籠もる老爺の友か寒鴉 半可ξ
(さしこもる ろうやのともか かんがらす)


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1月16日

大比叡やしの字を引いて一霞 芭蕉
(おおひえや しのじをひいて ひとがすみ)

延宝五年、芭蕉34歳の時の作。と。

芭蕉 立机のころだと。

比叡山に霞がかかっている。
「し」の字を一気に引いたような霞だ。と某解説。

なんだかこれじゃ、どこがおもろいのか全く解らん句だすな。

大前提は、
一休さんが比叡山の老僧から「大きく長くて読みやすき字の書」を所望され、ほなといって、金堂前から麓の坂本まで紙を敷かせ、一気に筆をいや足を走らせた。

その「大きく長くて読みやすき字の書」が「し」であったというお話だす。

なんだ一休さんのトンチ話か・・だが、それでも、どこがおもろいのか全く解らん。

芭蕉さん、宗匠として売り出したてなのに大丈夫かなである。

しかしこれ、
芭蕉崇拝者には申しわけ無いが、俳諧師桃青としてはしてやったりのつもりなのさね、

つまり、
冬の寒い朝、しょんべんに行くのがおっくうでがまんしてたらたまらなくなり、急ぎ飛び起き縁先から大放水。 みごとに大きく「し」を描き、外気の寒さに湯気が霞んでござーる。

てな句意でがんしょ。

俳諧としては、一休の御伽噺を題材に、しょんべんを笑い飛ばしたということでんね。

決して、比叡山の麓に大きく霞たなびく風情の句ではありませんのじゃ。

当地雪の歩道の景

大冷えやのの字のの字の犬の尿 半可ξ
(おおびえや ののじののじの いぬのしょん)


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1月18日

煮麺の下焚き立つる夜寒哉 芭蕉
(にうめんの したたきたつる よざむかな)

元禄四年晩秋。と。

膳所の菅沼曲水亭にて、夜寒といへる題の発句。と。

いつの時代も、寒い日には温かい汁ものは最高ですな。

昨日、野暮用を終え、久々に街中をぶらつき、写真集一冊と、旨いラーメン一杯を得る。

数日前たまたま通りかかった時、数十人の行列にビックリポンで調べてみたら、かなりの人気店らしく、昨日はお昼少し前様子を見ればなんと数人。

入るしかないでしょうと入る。

人気ナンバーワンとある「元気のでるみそラーメン」なるものを求める。

スープの味は行者にんにくが決め手。硫化アリルという成分が、血液はサラサラ、疲労回復薬効・・と。

匂わずギトつかずさらり、しかし酷のあるいいかんじ。

とりわけ★★★と思ったのは麺の食感のたまらぬ良さ。

さすが北海道農協の大元締めホクレンビルの地下食街の店ということはある。

極上つるつるの小麦の感覚!だわさ。

拉麺のつるつる立つる深雪晴 半可ξ
(らーめんの つるつるたつる みゆきばれ)

そうそう御店の屋号は一粒庵だわさ。

旨いラーメン

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写真集一冊

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野暮用2018/1/17

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1月19日

天津縄手、田の中に細道ありて、海より吹上る風いと寒き所也。

  冬の日や馬上に凍る影法師 芭蕉
(ふゆのひや ばじょうにこおる かげぼうし)

初案は 冬の田の馬上にすくむ影法師
後に  さむき日や馬上にすくむ影法師
の後に すくみ行や馬上にこおる影法師
だったらしい。

そして、すくむが一挙に凍ると「笈の小文」で昇華?したっうわけだ。

貞享四年の霜月十一日。44歳。
伊良子崎に蟄居中の杜国を訪ねる旅中の句だと。

冬の日や荷台に凍る雪坊主 半可ξ
(ふゆのひや にだいにこおる ゆきぼうず)


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1月22日

庭訓の往来誰が文庫より今朝の春 芭蕉
(ていきんのおうらい たがぶんこより けさのはる)

延宝六年、六百番俳諧発句合/江戸広小路。

芭蕉35歳の時の作。元旦。と。

庭訓の往来は江戸時代寺子屋で使う手紙文例集の教科書。だと。


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文科省の小学生向けプログラム学習ソフト「プログラミン」とかで、プログラムを試して見る。

プログラムというよりは、オペレーションプログラムだが、老爺でもそこそこ暇つぶしに遊べる代物だ。

コンピュータは箱の中を零と壹の徒党が走り回るイメージから、

零壹の往来爺は春を待ち 半可ξ
(ぜろいちの おうらいじじは はるをまち)

ちなみに下は爺のおためし手遊び作品・・その1也。

1月25日

月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。

予もいづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂白の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘蛛の古巣をはらひて、やや年も暮れ、春立てる霞の空に、白河の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず、股引の破れをづづり、笠の緒付けかへて、三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別所に移るに、

草の戸も住み替はる代ぞ雛の家 芭蕉
(くさのとも すみかわるよぞ ひなのいえ)

表八句を庵の柱に掛け置く。

  有名な奥の細道の冒頭の、序文だべさ。

さてさて、
実は7年間無事に働いてくれていたブルーレディスクレコーダーが、このところ、読めたり読めなかったりで、調子が芳しくなく、どうやら御寿命が来たということらしい。

御新規購入っうのも、4・5万するし、そもそも他の機能になんの落ち度も問題もなく、結局もったいないが最優先で、BDライター部分をとっかえてみようと思い、予行演習っうことで分解してみる。

Macのハードディスク交換の時に比べると10倍楽だった。

で、これならと、
さっそく純正のBDライター13,000円をオーダーした。

まだモノが届かないので、期待もあり不安もあるが、旅立ち前の大宗匠と同じ心境っうことで、半可ξの今日の一句は、

録画機も住み替わる代ぞ冬の朝 半可ξ
(ろくがきも すみかわるよぞ ふゆのあさ)

これが成功したら、つぎはHDをでっかくしよう。


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囂kamabisuan庵