囂kamabisuan庵

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12月1日

分別の底たたきけり年の昏 芭蕉
(ふんべつの そこたたきけり としのくれ)

作句時期は不詳ながら、もっぱらの説は芭蕉40代の句ということだ。

前に芭蕉の御政堂に対する態度は、やや批判的と書いた記憶があるが、この句もそっち系の句として見ると面白い。

芭蕉の40代入りの頃(貞享元年)は、後の犬公方徳川綱吉が五代将軍に就任し、大老政治を忌避し、側用人を重用した側近政治のネジをキリキリと巻き始める頃である。

批判勢力完全無視で、お仲間と忖度官僚忖度マスコミに囲まれた独善政治のまかり通る現今。

批判者芭蕉誕生の背景も、どこか当世の空気に似た感じがする時代だったんですね。

政治や世相に対する不安不満の庶民のやるせない心が実に巧みに表現されている、当時としては精一杯の世相批判だと余は思う。

本日より2020年12月。

丁半に似た日々暮らす年の暮 半可ξ
(ちょうはんに にたひびくらす としのくれ)

籠城用のお城建設はやっと二階まで。


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12月10日

瓜の花雫いかなる忘れ草 芭蕉
(うりのはな しずくいかなる わすれぐさ)

貞亨年間の作だと。

其角の「類柑子るいこうじ」にエピソードがあるとか。

芭蕉が茶人河野松波宅を訪れたところ、口の欠けた古いヒョウタンに瓜の花を生けて、その下に糸の無い琵琶を置き、花からもれる水が琵琶の撥面に当って発する妙なる音をもって涼をとっていたという。

水滴を地中に埋めた瓶に落とし、反響する琴の様な音色を楽しむ「水琴窟」の「にわか」琵琶バージョンといったところだ。

河野のおっちゃん乙でやんすな。

ところで、その瓜は織田信長の家紋。

よって信長忖度衆たちは瓜を食べなかったというオチの話があるが、そんな時代も遠くなり、我らが芭蕉は逆に瓜が大好物。

瓜がうまいうまい風の芭蕉の句はいっぱいある。

あれっ? 徳川が胡瓜の断面が三つ葉葵に似ているから・・と混同したか?
いやいや!祇園祭の最中は京都じゃ木瓜もっこ家紋に似てるからと瓜は食べないとか・・。

ともあれ、その信長も瓜は大好物だったとか。

さてさて、


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余が籠城する城が完成したぞ。

本能寺に客死した信長の安土城天守閣のペーパークラフトだ。


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原本はなんとなくもったいなく思い、っうか 吝嗇(ケチ)って、コピーをして作った。

故に金箔張りのところは「黄色」。

そうだ! 原本は姪っ子のお子に献上致そう。


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しかし籠城するにもボーッとしてるのも飽きる。
次は、何やるかな。

コロナ禍や熊穴に入る午前2時 半可ξ
(ころなかや くまあなにいる ごぜんにじ)


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12月19日

煮麺の下焚き立つる夜寒哉 芭蕉
(にうめんの したたきたつる よざむかな)

元禄四年晩秋の頃、膳所の菅沼曲水亭に集まった皆さんで「ひとつお題は『夜寒』っうことでやってみましょう」とのことでした。

余はこの句に特別に親しみ感をもっちょります。

寒い夜のお酒のおしまいに煮麺でもどうですか?
いいですねーえ。
ほな、

しばらくすると消えかかっていた竃に新たに焚べられた薪がパチパチとちいちゃな炎を立ち上げる。

この炎が「たつる」シズル感がなんともいいんですな。

炎だって味なんです。

一気に心の隅々まで暖かさがじわーってとこが見えてきませんか。

人のもてなしにはいろんなプロセスがついて回るんですな。

これが、機微ちゅうもんですな。

いいですね。「たつる!」とは。

てなこと言ってる間に、間もなく冬至。

吹雪模様になった午後四時半は、大げさに言わなくともあたりは真っ暗。

何百グラム何千グラムもの雪の原料の塊が、余の頭の上にすっぽりと覆いかぶさっていることがよくわかる。


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それは我慢できるけど、

明け空に布団引き足す夜寒かな 半可ξ
(あけぞらに ふとんひきたす よざむかな)

後手後手の対策に国民は冷え冷え。
クシャミすらできません。

こっちは我慢にも限界がある。

12月22日

南都にまかりしに、大仏殿造営の遥けき事を思ひて

初雪やいつ大仏の柱立 芭蕉
(はつゆきや いつだいぶつの はしらだて)

元禄二年師走の句。

信長が美濃国でちょこっと頭を持ち上げ始めた頃の永禄十年十月、松永久秀と三好三人衆の戦闘で炎上した東大寺の大仏殿は、芭蕉が訪れた時は再建計画はあったがまだ手付かずで、大仏さんは野ざらし状態で、それでも火事で受けた傷の応急治療の最中であった。

この後、元禄四年に大仏さんの修理が終わり、 宝永二年には大仏殿の再興がなった。

さてさて、
まだまだCOVID19もウロウロしているし寒いしで余の籠城生活は続く。

先日までは安土城に籠城していたのだが、あきた。

今度は信州松本に城替えしようと築城に入る。

CanonプリンターのHPからだが、クオリティーは高そう。

安土城は、石垣から上へ上へと作っていったが、 松本城は上から下へ作るようだ。

で、

まずは五層六階天守の五層目が、 余のデスクにめでたく生えたという次第である。

気晴らしの松本城造営の遥けき事を思ひて

深雪晴れ切り折り貼りつ紙の城 半可ξ
(みゆきばれ きりおりはりつ かみのしろ)

数日来の雪空も去り、ほんに天気はいいのに・・

困ったもんだ。


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