囂kamabisuan庵

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3月1日

余のためのmemo 毎日新聞danke
高山邦男さん。57歳。
彼は深夜の東京を走るタクシードライバー

気が沈む時浮かび来る車中にて
罵倒されたる記憶幾つか

工事中の赤いポールが並ぶ道
われも並びぬ物の如くに

深夜番コンビニ店員李さんは
いつも含羞はにかみながらレジ打つ

四方を窓に閉ざされてゐる車内にて
兵士の狂気思ふ夜あり

もう帰る?今日も母から言はれつつ
仕事に出掛ける夜の街へと

冬の街ふとのぞき見るブックオフ
『幸福論』が吾を待ちゐたり

友達はラジオしかゐない運転手の
耳殻じかくに夜の潮が寄せる

立て続けに質問をする鈴木さん
人のこころの城壁を撃つ

辻待ちをしてゐる車の列を越え
何を伝えるぼくらの言葉


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3月2日

西行の庵もあらん花の庭 芭蕉
(さいぎょうの いおりもあらん はなのにわ)

何時の作かは不明だが、西行の大ファンでもある芭蕉が、露沾に贈った句だ。

内藤露沾ないとう ろせんは平藩七万石の次男坊。
芭蕉の門下でも上位の才人だ。

じつは露沾、家老派の陰謀で政界進出の芽を削がれ、六本木の下屋敷で風流の生涯を送るとある、いわば負け犬。

梅咲て人の怒の悔もあり 露沾
(うめさきて ひとのいかりの くいもあり)

猿蓑集 巻之四 春 冒頭の句である。
さすが帝王学修士、人情の苦楽をきちんと心得て、人とは自分のことでなく民のこと、悔いとは民の悔いと思いたいが、さてさてどうだか。

梅咲きて人の怒りの海もあり 半可ξ
(うめさきて ひとのいかりの うみもあり)

露沾は、梅→悔。半可ξは、梅→海と洒落る。


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3月3日

凍て解けて筆に汲み干す清水哉 芭蕉
(いてとけて ふでにくみほす しみずかな)

西行の作と言われている歌を捩っての句とか。

とくとくと落つる岩間の苔清水
汲み干すほどもなき住ひかな

ようやくの春である。

蝦夷の地もあちこちに春の気配がうかがえる。

凍て解けて大樹飲み干す根の周り 半可ξ
(いてとけて たいきのみほす ねのまわり)

大樹の根元周りの雪が解けて穴状になることを「根開き」というのだそうだ。


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3月4日

もの一つ瓢はかろきわが世かな  芭蕉桃青書
(ものひとつ ひさごはかろき わがよかな)

お弟子さんが持ってきた大きな瓢(ひさご)のつかいみちをいろいろブレストをした結果、米びつがいいと言うことになり、山口素堂に洒落た名前を付けてと頼んだ。

素堂は中国の故事に由来する四っの山名を読み込んだ詩を添えて、名を「四山の瓢」と銘じた。


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一瓢(ぴょう)黛山(たいざん)より重し
自ら咲(わら)って箕山(きざん)と称す
首陽の餓(うえ)に慣ふことなし
這(こ)の中に飯顆山(はんかさん=めし粒山)あり

瓢は「ひさご」とも「ふくべ」とも読む。

芭蕉先生は「ひさご」。

余は八重洲にある、通人の酒席「ふくべ」。
今は強面で天然スキンヘッドの兄さんが継いだ、おでんが旨い居酒屋での呑み開け「酔ひの口」が好きだった。

もうひとつ瓢のおでん宵の口 半可ξ
(もうひとつ ふくべのおでん よひのくち)

お通しに「ゆでじゃが」は珍しい。それに、ここの「くさや」は絶品。地酒も充実・・・・終わらない。結局〆まで呑んで仕舞った日もあったかも。芭蕉の清貧生活にくらぶれば天国。

3月10日

白魚や黒き目を明く法の網 芭蕉
(しらうおや くろきめをあく のりのあみ)

題蜆子像(蜆子<けんす>の像に題す)とあります。
蜆子さんというのは中国の伝説の坊さんで、網で白海老を掬っては食する、日本では恵比寿さまみたいなキャラだそうだ。

今日の句はそんなユーモラスキャラでもある蜆子さんの画を観てのパロディ句というところだ。

芭蕉さんが観た画かもしれない蜆子像。

作者は一糸和尚。江戸初期の臨済宗のお坊さんだ。
父は、村上源氏久我家の分家岩倉家の始祖岩倉具堯。
なんと、彼の『岩倉具視のご先祖』にあたるお方なり。

さて百姓凡人のおいらは
白米やむらさき染みる海苔の網 半可ξ
(はくまいや むらさきしみる のりのあみ)


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3月11日

春もやや気色ととのふ月と梅 芭蕉
(はるもやや けしきととのう つきとうめ)

本州では丁度今時分の句でしょうか。

吉田兼好徒然草の
「もののあはれは秋こそまされ」と人ごとに言ふめれど、それもさるものにて、今ひときは心も浮き立つものは、春のけしきにこそあむめれ。(以下云々略)

これを意識した句だなどという解説もあるが、どうだかねえ。

こちら北国はまだまだ「ととのわず」ですわ。

春もまだ気色ととのわぬ月と雪 半可ξ
(はるもまだ けしきととのわぬ つきとはな)

昨日桃始めて笑う、本日大潮、明日は満月。
はーるよこい。はーやくこい。


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3月13日

能なしの眠たし我を行行子 芭蕉
(のうなしの ねむたしわれを ぎょうぎょうし)

嵯峨日記 四月二十三日。初夏。 落柿舎にて。

なんもすることなく、閑をもてあましている。あああ・・欠伸が出るぜ。何とかせいとばかり、ヨシキリが仰仰しく鳴き騒ぐけど、やっぱ・・ねむたい。平和だ。

刻なしの眠たし我をあけがらす 半可ξ
(ときなしの ねむたしわれを あけがらす)

若い時は明日まで企画5案出せなんて言われて、普通に徹夜してこなしてた。
ある月、残業時間が128時間ってのがあって、妙な話だけど、部長に呼ばれて叱られた。仕事断れって。

余にとって残業代は当時持ってた車の維持費で必要だった。
翌月から100時間以上はめんどくさいからサービスして、ばんばん仕事を入れた。

今は芭蕉さんと同じで能なしの眠たしで生きている。


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3月14日

呑み明けて花生にせん二升樽 芭蕉
(のみあけて はないけにせん にしょうだる)

二升樽が尾張のお弟子から届いたよ。みんなで呑もうぜ。明いたら花生けにすんべ。

年あけて月日一斗の二升たり 半可ξ
(としあけて つきひいっとの にしょうたり)

今年も20%過ぎました。


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3月16日

けごろもにつつみて温し鴨の足 芭蕉
(けごろもに つつみてぬくし かものあし)

鴨さんたちは、日中はせかせか動き回り、夜になると足を片っぽ懐に抱いて、フラミンゴスタイルで寝るのだそうだ。バランス悪そうでたいへんだな。

深夜に足の組み替えをするのかな。
年取ってくるとそれが頻繁になって「頻足」が悩みの種になるのかな?

けごろももすれては寒し余の頭 半可ξ
(けごろもも すれてはさむし よのあたま)

写真は数年前のもの・・と頂き物です


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3月17日

祖父親孫の栄えや柿蜜柑 芭蕉
(おおぢおや まごのさかえや かきみかん)

元禄四年八月。京都樫田という所にある、何代も続く豪商の兎苓さんの別荘での挨拶句だそうだ。

余も果物では柿が一番好き。次ぎにオレンジ。

今日おやつオレンジレアチーズケーキ 半可ξ
(きょうおやつ おれんじれあ ちーずけーき)

プロントでビブリア古書堂の事件手帳を読みながら食す。


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3月19日

花は賤の目にも見えけり鬼薊 芭蕉
(はなはしずの めにもみえけり おにあざみ)

二十三歳の時の作。

賤(しず)は身分の低い者と言う意味。古来より身分の低い者や庶民には、「鬼」は見えないという諺(ことわざ)があるとかで、花の鬼なら、おいらみたいなペーぺーの身分でも見えまっせと戯れている句だと。

現代も同じ。

一般人には鬼の姿はなかなか見えません。

でも、身分が高いと思っておられる(とくに火中のおっさんたちやお役人やマスコミの)人々には、ちゃんと見えていることでしょう。お互いが鬼に。

忖度は目にも見えけり国有地 半可ξ
(そんたくは めにもみえけり こくゆうち)


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3月25日

年は人にとらせていつも若夷 芭蕉
(としはひとに とらせていつも わかえびす)

寛文六年23歳。宗房時代の作。
若夷は正月に売りに来るえびすさまの絵を描いた紙札。

芭蕉が若い頃の俳諧は、世の中を斜めから覗いて皮肉ったり、茶化したたりの、レトリックを自慢しあった。
風情だ侘びだ寂びだではなく「おもろいな・おもろくないな」である。

幕政のたるみや横暴に対し、民パワーエネルギーが徐々に支配階級を逆に支配する時代の到来が背景にある。

馬鹿な政治には人心が離れていくということだ。

罪は人にとらせて餅に蜜かけて 半可ξ
(つみはひとに とらせてもちに みつかけて)


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3月30日

鶯や竹の子薮に老を鳴く 芭蕉
(うぐいすや たけのこやぶに おいをなく)

梅の時期が似合う鶯も、筍の藪で鳴いてるぜ。声もしわがれて爺くせいぜ。相変わらず理屈ぽい句だ。

北国の爺は、早くこんな季節にならないかなと伸び過ぎちまった首でキリンになっちまつた。

ところで、鶯餅はメジロ色というFBを見た。
鶯はスズメみたいないろかたちだそうだ。
ほんになんでやろ?

よく鶯の初音は下手だと聞くが、それでもいいから、はやく鳴いてくれないかな。

鶯や斑雪の藪に産の声 半可ξ
(うぐいすや はだれのやぶに うぶのこえ)


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3月31日

発句なり松尾桃青宿の春 芭蕉
(ほっくなり まつおとうせい やどのはる)

延宝七年、芭蕉36歳。前年「芭蕉」ブランドを立ち上げての年頭の句というが、桃青とはこれいかに。

ほっけなり余半可ξ宿の春 半可ξ
(ほっけなり われはんかくさい やどのはる)


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ほっけは鮎魚女科の白身魚。本州のファンには申しわけ無いが、開きなんてたんなる保存食。新鮮なやつを、切り身に下ろしてもらう。切り方は頭落としで二枚に下ろし、胸と腹に切ってもらう四等分がいい。そいつを醤油と酒と砂糖と生姜で甘辛に煮付けたのが、ことさら旨い。すり身にして油で揚げるのも超絶品。

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